5月 13 ⑫写真が語る風景
最近の話だけれど、結婚写真ではないし、新しい話でもない。
地元の商店街が主催するお見合いバスツアーに同行して
写真を撮ってもらえないか、という依頼を受けて
商店街の入り口にあるレンタル会議室へ。
俺としては結婚写真を専門にやっているので、スナップ
写真だったらデジカメを貸して、商店街の若いお兄ちゃん
あたりに任そうかな、と考えてた。
一応形式上会議に参加したけれど、初めての試みで
まだ参加者も揃ってない感じ。商店街のおじいちゃんたちに
囲まれ、居心地の悪~い時間を過ごし、帰ろうとした時に
「あんた写真屋さんだよね」
中でも一、二を争う年配のおじいちゃんに声をかけられた。
「この写真って直せるんだろうか」
机の上には変色したモノクロの、シワだらけの写真が二枚。
一枚の被写体は写真館らしき建物の前にいる軍服の青年。
もう一枚は、畑の前で子どもを抱いた女性。
「なんですか、これ。」
「僕とかみさんと子どもなんですよ。」
聞けば結婚が決まり、結婚式を挙げようという段になって
空襲が激化。結婚はしたもののおじいさんはあっという間
に徴兵されて、敗戦後日本に戻ってきたら奥さんは亡くなり
子どもだけだったらしい。
無理してでも結婚式を挙げてやればよかった、と悔やんだ
そうだ。ある日、預かってくれていた親せきから、奥さん
の遺品が届けられ、その中に入っていたのが件の写真。
「僕はこれを結婚写真だと思ってるんだよ。」
そのおじいちゃんの姿を見てたら、会ったこともない若い頃
の二人の結婚式の風景が浮かんできた。
今、直した写真はおじいちゃんの家の仏間に飾ってある。